「『健康第一』は間違っている」名郷直樹氏

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 日本は世界一の長寿国。2013年には日本人の平均寿命は男性が80・21歳、女性は86・61歳となり、男女いずれも過去最高を更新している。これはもちろん素晴らしいことだが、一方で私たちの身の回りは“健康長寿”のための情報であふれ返り、必死に健康に、もっと長寿にと突き進んでいる。

「80歳をとうに越えたご高齢の方が、大好きな酒や甘いものを必死で我慢する。禁煙を守り通す。一生懸命運動をする。すべては、健康長寿のために。そんな患者さんと数多く接する中で、これが本当に正しい道なのかと疑問を感じるようになりました。健康長寿が悪いというつもりはありませんが、日本人はその果てしない“健康欲”と、どこかで折り合いをつける必要があると思うんです」

 日本人の生存曲線を見てみると、1980年代までは、50歳以降100歳にかけて徐々に死ぬ人が増えるという緩やかな曲線だった。これが近年、70歳過ぎまで線がおおよそフラットな状態で、以降急激に死亡が増えるという急カーブを描くようになっている。

「医療が進歩しても、死はいつか訪れます。つまり、日本人は長生きになった結果、高齢になると同年代が一挙に次々と死んでいくという、つらい現実を体験せざるを得なくなっています。このような状況の中でも、長寿大国である日本では、長寿を目指さず頑張らないことは非難されがちです。生き残った高齢者は、もっと長生きしようと努力せざるを得ないんですね」

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