「検証・法治国家崩壊」吉田敏浩氏

公開日: 更新日:

 本書の共著者のひとり新原昭治氏が、2008年、アメリカ国立公文書館で秘密文書を発見した。それは、1959年3月30日、砂川事件の東京地裁で「米軍駐留は憲法違反」とした判決に対する、アメリカからの圧力があったことを示す重大な証拠だった。

「伊達秋雄裁判長の名前をとったこの伊達判決は、日米両政府に大きな衝撃を与えました。米軍基地への反対運動を勢いづけ、新安保条約の国会提出の障害になるということで、判決を覆すためにアメリカが日本に介入してくる様子が30年後になって公開されたアメリカ公文書から明らかになりました」

 GHQ最高司令官マッカーサーの甥であるマッカーサー2世駐日アメリカ大使は、判決の翌日に藤山愛一郎外務大臣に会い、「日本政府が迅速な行動をとり、地裁判決を正す重要性を強調した」と極秘公電をアメリカ本国に打っている。

「公電では、高等裁判所を飛び越えて、最高裁へ上告することをマッカーサーが藤山に勧め、藤山は『全面的に同意する』と答えているんですよ。皇太子の結婚でミッチーブームに沸いていた背後で、最高裁長官・田中耕太郎はマッカーサー大使と交渉をもち、裁判の秘密を漏洩します。これは、裁判所法第75条違反です。司法の独立が侵害された、法治国家崩壊と呼ぶべき大事件だったんです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー