「反<絆>論」中島義道氏

公開日: 更新日:

 東日本大震災直後から、<絆>という言葉は特権的地位を獲得し、多くの日本人が<絆>の旗印のもと、“被災者のために行動を起こしたい”と考えた。しかし、哲学者である著者は、この風潮に疑問を投げかける。

「被害に遭った人々に対し、何とかして彼らを救いたいと思うことは決して悪いことではありません。私自身も、<絆>そのものを否定しているわけではない。しかし、メディアが被災地の感動的な場面を次々に紹介し、<絆>を連呼したことで、妙な居心地の悪さを感じるようになった人もいるのではないでしょうか」

 すべての人が<絆>を美しくて善いものと感じるとは限らない。しかし、異論を唱えることなど許されないほどに、絶対化された<絆>。こんなときだからこそ危機感を持ち、発せられる言語に耳を澄ますべきだと著者は言う。

「略奪や暴行など直接的な行動がなくても、非常事態には言語による暴力がまかり通りやすいこと、そしてその他の言語を圧殺しやすいことを知っておく必要があります。とくに日本人は、“同じであること”に美徳を感じる傾向が強い。言い換えれば、異論を唱えて和を乱す存在を認めないということで、“同じ”でなければ生きにくい国です。東日本大震災以降のメディアによる<絆>の大合唱は、かつてお国のために名誉の戦死を遂げた兵隊さんと、それを手放しで褒めたたえたメディアという図式と、何ら変わらないと感じます」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「左膝の半月板が割れ…」横綱・豊昇龍にまさかのアクシデントで稽古中止

  2. 2

    松山千春がNHK紅白を「エコひいき」とバッサリ!歌手の“持ち時間”に求めた「平等」の正当性を考える

  3. 3

    巨人オーナーから“至上命令” 阿部監督が背負う「坂本勇人2世育成&抜擢」の重い十字架

  4. 4

    高市政権が抱える統一教会“爆弾”の破壊力 文春入手の3200ページ内部文書には自民議員ズラリ

  5. 5

    前橋市長選で予想外バトルに…小川晶前市長を山本一太群馬県知事がブログでネチネチ陰湿攻撃のナゼ

  1. 6

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網

  2. 7

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  3. 8

    バタバタNHK紅白 高視聴率でも今田美桜、有吉弘行らMC陣は負担増「出演者個々の頑張りに支えられた」

  4. 9

    菊池風磨のカウコン演出に不満噴出 SNS解禁でSTARTO社の課題はタレントのメンタルケアに

  5. 10

    ロッテ前監督・吉井理人氏が大谷翔平を語る「アレを直せば、もっと良く、170kmくらい投げられる」