「狂信者」江上剛氏

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 フリーライターの堤慎平は、湯浅晃一郎に請われて彼が率いるユアサ投資顧問会社に入社した。厚生年金基金の運用をしているはずの会社で堤が見たのは、天下りの役人の斡旋によって国民の年金基金が吸い寄せられ、消えていくからくりだった。

 金融の世界を描き続けている江上氏が本作を書くきっかけになったのは、2012年、厚生年金基金の投資顧問AIJの運用資産の大半が消失しているという、衝撃的な事実が発覚したことだった。

「サラリーマンの将来の生活の原資が消えてなくなってしまう。それなのにだまされる人がたくさんいるというのは、作品のテーマとしておもしろいのではないかと思ったのが動機ですね」

 まだキャリアの浅いフリーライターの堤の視点で、37歳の湯浅にまとわりつく魑魅魍魎の世界が描かれているが、この2人を主役にしたのには理由がある。

「現実の事件を起こした人は年配者ばかりでドラマ性がない(笑い)。今、年金をもらったり、投資で利益を手に入れようとしているのは高齢者ですが、将来、年金をもらえるかどうかわからないのに年金を支えなくてはならず、いちばん割を食っているのが30代後半の世代です。就職するときも氷河期だったし……。そこで、そういう世代との利害の対立を明確にするような設定にしました」

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