「イスラム国の野望」高橋和夫著

公開日: 更新日:

 とかく理屈と抽象論の多い宗教関係の本。しかしISに関しては実際的な書物が増えた。本書はそのひとつ。きびきびしたわかりやすい文章がいい。「ターリバーン」を支援したのが「アルカーイダ」。スンニ派ゆえシーア派のイランとはそりが合わないが、「ビンラーディン」一族が世話になった過去があり、イランでは一切テロを行わない。

 しかし、その手の現実主義には若い世代が反発し、代わってISが力をつけた。なぜならISは「真っ向勝負しかしない鉄砲玉のようなもの」だからだ。なるほど、こういう説明ならよくわかる。黒ずくめの衣装や指を1本立てるジェスチャーなどの様式性はナチによく似ており、それが若者を引き付ける一因でもあるという。

 反目し合うペルシャ人(イラン人)とアラブ人だが、ともにトルコ人に対しては「田舎者」とさげすみの目を向けることや、イスラム世界では指導者は美男がいいとされ、「オサマ・ビンラーディンはなかなかの二枚目」などという豆知識(?)も面白い。

(幻冬舎 780円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する