着々と進む原発再稼働。いまこそ福島第1原発の現実を直視せよ。

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「電力改革と脱原発」熊本一規著

 アベノミクスが成長戦略としているのは実は武器と原発の輸出。つまり日本は「死の商人」の国になろうとしているのだ、と批判する著者は環境問題を専門とする都市工学者。昨年4月に改定された政府の「エネルギー基本計画」には原発事故への真摯な反省の弁が含まれている。

 だが、実は経産省の当初案が自民・公明両党の横やりで削除されていたことを批判されて、慌てて復活させたに過ぎない。実際のエネルギー政策は事故前の第2次改定計画と大差ないのだ。ほかにも不審な点は多々。たとえば、使用済み核燃料は「直接処分がはるかに安くつく」ことを原子力委員会でさえ認めている。

 しかし今回の改定では「再処理・核燃料サイクルを進める」のまま。実は再処理にしておかないと使用済み燃料は資源ではなく廃棄物となり、青森県から持ち出さなくてはならなくなるのだ。要は表面をとりつくろった政治的理由でのリスク侵犯を意図的におこなっているのである。

 日本の未来は「脱原発」しかない。それを単なる感情論ではなく、確固たる科学的議論を積み重ねながら主張しなければならない。(緑風出版 2200円+税)

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