着々と進む原発再稼働。いまこそ福島第1原発の現実を直視せよ。

公開日: 更新日:

「電力改革と脱原発」熊本一規著

 アベノミクスが成長戦略としているのは実は武器と原発の輸出。つまり日本は「死の商人」の国になろうとしているのだ、と批判する著者は環境問題を専門とする都市工学者。昨年4月に改定された政府の「エネルギー基本計画」には原発事故への真摯な反省の弁が含まれている。

 だが、実は経産省の当初案が自民・公明両党の横やりで削除されていたことを批判されて、慌てて復活させたに過ぎない。実際のエネルギー政策は事故前の第2次改定計画と大差ないのだ。ほかにも不審な点は多々。たとえば、使用済み核燃料は「直接処分がはるかに安くつく」ことを原子力委員会でさえ認めている。

 しかし今回の改定では「再処理・核燃料サイクルを進める」のまま。実は再処理にしておかないと使用済み燃料は資源ではなく廃棄物となり、青森県から持ち出さなくてはならなくなるのだ。要は表面をとりつくろった政治的理由でのリスク侵犯を意図的におこなっているのである。

 日本の未来は「脱原発」しかない。それを単なる感情論ではなく、確固たる科学的議論を積み重ねながら主張しなければならない。(緑風出版 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「マラソン」と「大腸がん」に関連あり? ランナー100人への調査結果が全米で大きな波紋

  2. 2

    “マトリ捜査報道”米倉涼子の圧倒的「男運」のなさ…海外から戻らないダンサー彼氏や"前科既婚者"との過去

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    大阪・関西万博「最終日」現地ルポ…やっぱり異常な激混み、最後まで欠陥露呈、成功には程遠く

  5. 5

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  1. 6

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  2. 7

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  3. 8

    巨人の大補強路線にOB評論家から苦言噴出…昨オフ64億円費やすも不発、懲りずに中日・柳&マエケン狙い

  4. 9

    元体操選手の鶴見虹子さん 生徒200人を抱える体操教室を経営、“アイドル”も育成中

  5. 10

    地上波連ドラ3年ぶり竹内涼真に“吉沢亮の代役”の重圧…今もくすぶる5年前の恋愛スキャンダル