「カフカの『城』他三篇」森泉岳士著

公開日: 更新日:

 解説を寄せるフランス文学者の陣野俊史氏は、「小説には書かれていないけれど、どう考えてもその小説の中心にあるモノ」があり、コミック化で「小説の中で読者がもっとも惹かれているモノを、きちんと指し示す」著者の文学的理解力は尋常ではないと称える。

 終始一貫、コミックではあまり見当たらない縦長のコマ割りで官能シーンから謎解きまで進む「盗まれた手紙」、言葉では語り切れない「先生」と「私」の関係性を「燃えるような『霧島』を精密に描くことで完璧なまでに表現している」と前出の陣野氏が評する「こころ」、鰐にのみ込まれた男と彼の妻の物語を日本に置き換えた「鰐」。著者は、各作品で言語化されていない「不可視の存在」を独特のタッチのコミックで描き出す。

 作品集を製作するにあたり、多くの名作を読んだという著者は、「『城』は、今こそ読まれなければいけない、差し迫った現実の物語として読めた」とあとがきでつづる。その他の3作品も「現代を生きるために必要な、実用的な手引書のように感じられた」とも。

 小説の「たましい」を言葉の世界の中からそうっとすくい上げ、コミックという別の媒体に移植した作品が新しい読書体験をもたらしてくれる。(河出書房新社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 2

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  3. 3

    嶋基宏は一時期ノイローゼ状態になっていた...心ここにあらずで、魂が抜けた状態に

  4. 4

    伊藤健太郎とキンプリ永瀬廉で明暗クッキリ…「熱愛報道」出口夏希の足を引っ張りかねない“イメージ格差”

  5. 5

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  1. 6

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  2. 7

    視聴率の取れない枠にハマった和久田麻由子アナの不運 与えられているのは「誰でもできる役割」のみ

  3. 8

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 9

    居酒屋倒産が過去最多ペース 客離れの背景にある「飲み放題5000円」の壁

  5. 10

    巨人“育成の星”のアクシデントに阿部監督は顔面硬直、原辰徳氏は絶句…桑田真澄氏の懸念が現実に