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増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「ゴルゴ13」(既刊216巻)さいとう・たかを作

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「ゴルゴ13」(既刊216巻)さいとう・たかを作

 地下鉄の中や病院の待合室で「俺の後ろに立つな」と言わんばかりににらまれることがここ数年増えてきた。みな手に持ったスマホ画面を見られるのが嫌なのだ。

 この言葉「俺の後ろに立つな」の面白さを若い人は私たち世代のように理解できないかもしれない。「ゴルゴ13」の既刊216巻は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」とデッドヒートしていたが、向こうが終了したいま、無人野をゆく状況になっている。単行本累計発行部数は3億部。連載スタートは1968(昭和43)年だから57年間も続いているのだ。

 私が北海道大学の学生だった昭和の終わり頃には今以上に売れに売れていた。私たち柔道部員は年に5度の合宿期間中、布団にごろごろしながら単行本を読みふけっていた。1週間の合宿、はじめのうちは専門書を開いて勉強していた者も、練習の激しさで消耗し、やがて小説を読むようになる。しかし2晩もするうち、その小説も難解に感じて読んでいられなくなりゴルゴの単行本に移るのである。

 劇画の元祖ともいえるさいとう・たかを先生のタッチは目に優しいとはいえず、読みやすいものではない。しかし疲れた頭にスーッと入ってくるのは、今回文頭にあげたようなフォーマット化されたセリフや毎度のストーリーにある。

 冒頭は各国首脳に近い権力者、あるいは反権力者たちが、邪魔者を消すために誰かいないかと鳩首会議をしている場面だ。そして「彼しかいない」と白羽の矢が立つのがゴルゴ13というコードネームの東洋系スナイパーなのである。

 常に無表情な暗殺マシンぶりが人気の秘密で、1回の報酬は日本円で億の単位、最高15億円(1000万ドル)に達したこともある。狙撃成功率は99%以上の完全無比。無表情で葉巻をくゆらせながら騎乗位の女性に喜悦の泡を吹かせるのも“イキ”なキャラ設定である。

 しかしこの長寿漫画も何度か時代の波をかぶった。特に大きかったのはソ連を含めた東側諸国の崩壊と、中国の民主化路線。こういった国が昔はベールに包まれていたのでゴルゴに依頼が多数あった。だからこのシリーズを続けるために世界にはまだまだ緊張していてほしいとファンは願っている。平和とは真逆志向、ゴルゴファンはそういうヤツらなのだ。

(リイド社 820円)

【連載】名作マンガ 白熱講義

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