「カフカの『城』他三篇」森泉岳士著

公開日: 更新日:

 表題作をはじめ、漱石の「こころ」(先生と私)、ポーの「盗まれた手紙」、ドストエフスキーの「鰐」という不朽の名作4作をコミック化した大判作品集。名だたる文豪たちの絢爛たる文章を凝縮して、さらにエッセンスだけを抽出したかのように、それぞれの作品をわずか16ページという短編に仕立て直した、まさに文芸とコミックが融合した新たなアートともいうべき完成度だ。

「城」はカフカの死後に発表された未完の長編小説。主人公がある日、目覚めると虫になっていたという「変身」で知られるカフカの小説だけに、この作品も登場人物たちの会話からして読者を翻弄する。主人公である測量士のKは、伯爵家に召し抱えられることになり、ある雪深い村の丘の上に立つ城を目指すが、村長らと面会を重ねてもらちが明かず、城にたどり着くことができない。〈13ページにつづく〉

 そればかりか、彼を雇ったクラム長官ともすれ違い、面会もかなわない。

 そうこうするうちにKは、クラム長官の恋人だという給仕女と情を交わし、彼女を自分の宿屋に連れて帰る。

 原作を読んだことがある人なら、こうしたわずかなセリフと絵だけで、なぜこうまでカフカの世界を忠実に具象化できるのか不思議に感じることだろう。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い