「変わらないために変わり続ける」福岡伸一著

公開日: 更新日:

 駆け出しの研究者だった25年前、一時雇われの身として滞在したロックフェラー大学。寝食を忘れて研究に没頭した思い出のキャンパスに、著者は2013年から2年間、客員教授として舞い戻った。何の変化もないかのように見えた青春の舞台にはかつての教授や遺伝子解読法の姿はなく、今や世界最先端の生命科学研究の場となっていた。

 本書は、古巣に戻った著者が見て感じて体験した、NYの絶え間ないダイナミズムと文化、さらに生命科学研究の今をつづったエッセー集だ。

 NYの今と昔、異国で感じる日本語への渇望、食文化差の理科的な考察、マンハッタンでの自然観察、生命科学史から見たウイルスという存在の不思議さやSTAP細胞問題の闇など、読みごたえのあるトピックが並ぶ。定説とされていたものが覆って新たな知見が定評を得ていく研究の世界と同様、決して停滞せずに生き物のように変化していく街を闊歩する著者の楽しそうな様子が伝わってくる。
(文藝春秋 1300円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  3. 3

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  4. 4

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 5

    【独自】江角マキコが名門校との"ドロ沼訴訟"に勝訴していた!「『江角は悪』の印象操作を感じた」と本人激白

  1. 6

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  2. 7

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 8

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 9

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  5. 10

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール