「玉の井という街があった」前田豊著

公開日: 更新日:

 隅田川の東隅にかつてあった私娼街「玉の井」と、そこに生きた人々の姿を記録したエッセーの復刻版(1986年刊)。

 玉の井のはじまりは、大正12年の関東大震災で焼け出され浅草から移住してきた銘酒屋街。昭和20年3月の大空襲で焼失するまでわずか20余年の歴史しかない。隅田川を挟んだ公娼街「吉原」とは対照的に、みすぼらしい二階屋が並ぶその街は、路地が入り組み、一度足を踏み入れると容易には出られない迷路のようだったという。女性たちが小窓から路地を行き交う男たちを誘うその風景から、街に通った有名人たちのエピソードまで、自らの体験と取材をもとに、よく知られていないその実像を描き出す。

(筑摩書房 800円+税)

【連載】文庫あらかると

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  2. 2

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  3. 3

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  4. 4

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  5. 5

    山尾志桜里氏“ヤケクソ立候補”の波紋…まさかの参院選出馬に国民民主党・玉木代表は真っ青

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  2. 7

    フジテレビCM解禁の流れにバラエティー部門が水を差す…番宣での“偽キャスト”暴露に視聴者絶句

  3. 8

    国分太一は“家庭内モラハラ夫”だった?「重大コンプラ違反」中身はっきりせず…別居情報の悲哀

  4. 9

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒