著者のコラム一覧
香山リカ精神科医・立教大学現代心理学部映像身体学科教授

1960年、北海道生まれ。東京医科大卒。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。著書に「執着 生きづらさの正体」ほか多数。

知性主義の回復の芽を感じる希望の書

公開日: 更新日:

「官僚階級論」佐藤優著

 書店をのぞけば必ず並んでいる佐藤優氏の新刊。私は「政治と宗教について大切なことはすべて佐藤優から教わった」と言ってよいほどの佐藤マニアであるが(笑い)、とてもすべては読みきれない。そんな私と同じ心境の人におすすめしたいのが、「官僚階級論」である。本書は「官僚とは何か、いつ成立したか」という官僚論の体裁を取っているが、そこには国家、キリスト教、マルクス主義、そして沖縄といった佐藤思想のエッセンスがぎゅっと詰まっている。他の著作同様、さまざまな人名、書名が登場してめまいがしそうになるが、語り口調はやさしく脚注も親切だ。興味のあるパートから拾い読みしてもよいだろう。

 さて、本書の読み方はさておき、肝心の官僚論についても少し触れておこう。著者の考えは明確で、マルクスは社会から「資本家・地主・労働者」の3つの階級が生まれるというモデルを考えたが、その外にある「国家」まで視野に入れると、4つ目の階級として「官僚」が必然的に出現することになる。つまり、「官僚」は職業でも立場でもなく、階級だというのが著者の主張の要だ。そう考えると、国家存続のためにその実体を担う官僚が暴走したり、国民に強権を行使したりするのも当然といえる。それは官僚それぞれの人がらなどとは関係ないことなのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    嵐ラストで「500億円ボロ儲け」でも“びた一文払われない”性被害者も…藤島ジュリー景子氏に問われる責任問題

  2. 2

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  3. 3

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  4. 4

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  5. 5

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  1. 6

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  2. 7

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール

  3. 8

    織田裕二「踊る大捜査線」復活までのドタバタ劇…ようやく製作発表も、公開が2年後になったワケ

  4. 9

    「嵐」が2019年以来の大トリか…放送開始100年「NHK紅白歌合戦」めぐる“ライバルグループ”の名前

  5. 10

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞