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「日本昭和ラブホテル大全」金益見、村上賢司著

 プライベート空間が少ない住宅事情から生まれたラブホテルは、日本の堂々たる文化。人々の欲望や憧れを反映してきたこの性愛空間は、最新の設備を備えるなど、日々、進化、リニューアルを繰り返しているが、なんといっても昭和のラブホテルはその扉の向こうに広がる非日常性で利用者を魅了してきた。

 今や絶滅危惧種とまでいわれる、そんな昭和の雰囲気が味わえる現役ラブホテルを紹介するグラフィックガイドブック。

 ラブホテルの研究に学術的に取り組み、これまで全国1000室以上を訪ね歩いてきたという金女史のイチオシは、大阪の「ホテル富貴」。40年ほど前の開業時のまま残された館内の意匠の素晴らしさは、まさに昭和のラブホテルの金字塔と呼ぶのにふさわしいのだとか。

 日常から解き放たれ、異空間へと誘う荘厳な神殿風の寝室があるかと思えば、前方後円墳型の浴槽を備えた風呂場、ベッドのボタンを押すと天井が開帳して春画が現れるなど。客室ごとに贅と工夫が尽くされているその一部を写真で公開。

 ほかにもレーシングカーや高級外車、戦闘機などをデザインした多彩な乗り物型ベッドが特徴の富山の巨大ラブホ「ホテルキング」をはじめ、プレーに使用する装置の数々は初代オーナーの手作りだという日本初のSM専用ラブホ「アルファ・イン」、ラブホの代名詞といえる回転ベッドがメゾネットタイプの客室の1階と2階の間を上下する佐賀の「エレガンス」、そして回転木馬やウオータースライダーまで備えた大阪の「ホテルリープハーバー」など。過剰なまでのサービス精神でカップルの愛の交歓を演出する。

 客室のみならず、建物そのものが未来を予感させる山形の「アイネUFO」や、宮殿のような千葉の「ホテルブルージュ」のように、外観から度肝を抜かれるラブホもある。これまで約1600棟ものラブホテルの設計を手掛けた亜美伊新氏へのインタビューなども収録。

 客室が狭くてベッドを置いたらぎゅうぎゅうで苦肉の策で天井や壁に鏡を張ったら大流行、ストリップ劇場の回るステージから思いついたという回転ベッドなど、氏が生みの親となったラブホスタンダードのエピソードが面白い。

 映画監督の村上氏は、昭和のラブホテルの魅力を「マーケティング無視の(オーナーや設計者の)『俺が面白いと思っているから面白いんだよ!』というゴリ押し精神がまかり通っていたから」だという。

 さあ、いとしい人と扉の向こうに広がる夢の世界へどうぞ。
(辰巳出版 1500円+税)


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