トランプ大統領が労働統計局長に“おまえはクビ!” 米国の雇用悪化で高まる「スタグフレーション」リスク
「You're fired(おまえはクビだ)」──。トランプ米大統領は1日、自身のSNSで米労働省のマッケンターファー労働統計局長を解任するよう指示したと表明。突然のクビ宣告に「政治介入だ」との非難が集まっているが、何があったのか。
キッカケは労働省が1日に発表した7月の雇用統計だ。景気動向を敏感に示す非農業部門の就業者数が前月比7万3000人増となり、市場予想(10万~11万人)を下回った。加えて5、6月の就業者数も事前見込みより計25万8000人少ない大幅下方修正。就業者数の伸びは3カ月平均3万5000人増にとどまり、コロナ禍以来最低を記録した。
統計発表後、激怒したトランプ大統領は自身のSNSに〈雇用統計は不正に操作されており、共和党と私を悪く見せるためのもの〉〈完全な詐欺〉と根拠もなく投稿。「統計を信用できない」という一方的な理由で、マッケンターファー局長にクビを言い渡したのだった。
今さらトランプ大統領の身勝手には驚かないが、急激な雇用悪化は気になる。景気後退の兆しなのか。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「アトランタ連銀の推計によると、米GDPは雇用統計の数字を織り込んでも年率2.1%成長です。割と堅調ですが、雇用だけが急に弱くなった。不自然な印象は拭えないものの、FRB(米連邦準備制度理事会)に利下げを迫ってきたトランプ氏にとっては願ったりかなったりでしょう。一方、インフレと景気後退が同時に進行する『スタグフレーション』に陥るリスクは否めない。カギは、米国への輸出企業がトランプ関税にどう対応するかです。価格転嫁を進めれば、米国内はモノの値段が上がり、消費者にとっては実質的な増税になる。消費が冷えれば景気後退にもつながる可能性があります。その場合、利上げしてインフレ対策を優先するか、利下げして景気対策を講じるか、FRBにとっては悩ましいでしょう」