「怪異伝説の民俗学」藤沢衛彦著
「怪異伝説の民俗学」藤沢衛彦著
大坂城代を命じられた酒井讃岐守は御城受取で大坂城に入り、秀頼の最期を思って涙ぐんだ。そのとき、麗しい声に呼び止められて立ち止まると、御簾の中から美しい女が現れて、秀頼の母、淀と名乗った。
その女は、城内の青屋御加番小屋前の松の木の下に秀頼の産毛を入れた壺を埋めたが、その場所が大勢の者に踏み散らされ、汚されているのが耐えられないので、清浄な地に移してほしいと頼む。その地を掘ると壺があったので、中を改めないまま壺を清浄な地に埋め、ほこらを建てて、淀の霊を鎮めた。(「鬼(気)・幽鬼・幽霊・化物」)
ほかに、人と動物との妖婚伝説など、世界各地の怪異譚を分類して論考を加えた名著の復刊。 (河出書房新社 3520円)