「神奈備」馳星周氏

公開日: 更新日:

 登場人物は、実質このふたり。悪天候の山へ深く進むにつれ、ふたりの心理背景や人生観も深く濃密にさらけ出されていく。

「下界の余計なものを入れたくなかった。登山で疲れてくると、自分の中の夾雑物がなくなっていくんですよね。ただ、こすっからい計算はなくて、実は何も考えずに書いていたりもします。後で読むと、『俺、こんなこと書いたっけ?』と思うこともよくあります(笑い)」

 潤と孝は、現代社会の切実感を切り取ったような存在でもある。毒親と貧困、独身中年男の孤独感と惑い。人物にリアリティーがあるだけではない。予測不能な自然災害に対する憂いと教訓も、今の時代につながるものがある。

「東日本大震災も、御嶽山噴火も、熊本大地震も、人間は忘れてしまう。福島の原発事故だって終わっていないのに。しかも現政権は自然災害だけでなく、戦争のことすら忘れて、なかったことにしようとしている。都合よく忘れて、すぐにバレる嘘をつくのは、現政権の得意技だけどね」

 想像を絶する結末は読み手を裏切るというべきか、あるいは心の底に波紋を広げるというべきか。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網