著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「マシュマロ・ナイン」横関大著

公開日: 更新日:

 高校野球小説である。ただし、かなり異色だ。なにしろナインの体重が全員100キロをオーバーしているのだ。中には130キロ、160キロというつわものまでいたりする。しかも全員が野球に素人。どうしてこんなチームが存在するのかというと、私立新栄館高校の校長が野球部を創設して甲子園をめざす、と突然宣言したからである。折よく(というのかね、こういう場合)、相撲部が不祥事を起こして活動休止中なので、相撲部員をそのまま野球部員として活動させればいい、というのが校長のアイデアだ。

 その野球部をまかされたのが元プロ野球選手で体育講師の小尾。甲子園に行けなければクビだというので引き受けたが、唖然呆然の日々が始まっていく。ハンバーガー4つを食べた直後に「最近食欲がないんだ」というやつもいれば、5人前のラーメンを30分以内に食べれば無料になるという駅前のジャンボラーメンを全員が平気で完食したりする。

 このように食欲の塊であるので、小尾が油断していると練習の休憩時間に空揚げ弁当を食べたりするのだ。もちろん、守れない走れないの二重苦で、どうしようもない。そこで考えたのが、ビッグ・ベースボール。打たれてもかまわない、エラーしてもかまわない。点を取られたら、それ以上の点を取ればいいのだ。というわけで、ぽっちゃり系の高校男子たちの壮大な夏が始まっていく。痛快な高校野球小説の誕生だ。

(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  4. 4

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 5

    西武は“緩い”から強い? 相内3度目「対外試合禁止」の裏側

  1. 6

    「1食228円」に国民激怒!自民・森山幹事長が言い放った一律2万円バラマキの“トンデモ根拠”

  2. 7

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  3. 8

    辞意固めたか、国民民主党・玉木代表…山尾志桜里vs伊藤孝恵“女の戦い”にウンザリ?

  4. 9

    STARTO社の新社長に名前があがった「元フジテレビ専務」の評判…一方で「キムタク社長」待望論も

  5. 10

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは