「鬼手 小早川秀秋伝」大塚卓嗣著

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 秀吉の養子として育てられ、豊臣家に身を捧げる使命を背負っていたはずが、関ケ原の戦いで東軍に寝返ったことで、裏切り者のレッテルを貼られてきた小早川秀秋。優柔不断で無能な者として描かれることの多かった秀秋は、本当に愚者だったのか。本書は、秀吉に忠義を果たそうとするあまり、愚者を装ったという新しい小早川秀秋像を描いた歴史小説だ。

 秀吉亡き後、忠誠を尽くすふりをしつつ寝首をかこうと家臣たちが策略を謀るのを感じた秀秋は、秀吉から「秀」の字をもらった者こそが次の日本をつくり上げると信じ、豊臣秀頼を中心に東を徳川秀忠が、西を自身が担うという未来図を描いたという設定が面白い。しかも、その純粋な思いはある人物の思惑に利用されてしまう。

 兄のような宇喜多秀家、律義者の徳川家康、冷酷無比な大谷吉継など、今までにない人物設定となっており、同じ歴史上の出来事が、解釈によって全く見え方が変わることに気づかされる。(光文社 1300円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

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