「遊戯神通 伊藤若冲」河治和香著
明治36年、友禅や西陣の図案家の雪佳は、打ち合わせに行った川島織物で伊藤若冲の「動植綵絵」をつづれ織りの壁飾りに仕立てているのを見学。仕掛け人は日本郵船のニューヨーク支店に勤務する三原だった。三原によると、翌年のセントルイス万博で公開するパビリオンのテーマが伊藤若冲なのだという。そんな中、雪佳は、若冲の末裔で、舞妓の玉菜と知り合う。
ある日、雪佳は玉菜に頼まれ、伏見に住む彼女の祖母・極子を訪ねる。極子は若冲の生家である錦市場の青物問屋「枡源」の8代目に嫁いだが、枡源は彼女の孫の代に没落。極子は、嫁いだころはまだ存命だった若冲の妹・美以から聞いたという若冲の話を語りだす。江戸と明治を行き来しながら、天才絵師の心の内奥に迫る長編小説。(小学館 1650円+税)