「シリア難民」パトリック・キングズレ―著 藤原朝子訳

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 近年、ヨーロッパに押し寄せる数十万単位の難民が大きな問題となっている。ある人は、定員オーバーのボートで地中海を越え、ある人は死と隣り合わせの砂漠の道なき道を渡る。無事に国境を越えても搾取や強盗に遭う危険を冒しつつ、故郷を脱出する理由とは何か。ガーディアン紙で移民担当記者に抜擢された本書の若手ジャーナリストは、シリア難民の今を追った。

 例えば、ダマスカス市の水道局員だった37歳のハーシムの場合、ある日突然、情報機関に監禁され、拷問を受け、空爆で家を破壊されて仕事を失った。その後、国内で避難先を転々とするのも難しくなり、エジプトに脱出したものの、そこでも政変が勃発。3人の子どもと妻を守るため、先にひとりでヨーロッパに渡って家族を呼び寄せるという、命がけのプランを実行に移した。

 本書ではこのハーシムの決死の旅を軸に、難民相手に金儲けする業者や欧州の混乱、NGOやボランティアの奮闘に至るまでを克明に描いている。(ダイヤモンド社 2000円+税)

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