「本を守ろうとする猫の話」夏川草介著

公開日: 更新日:

 高校生の夏木林太郎は幼い頃から祖父と2人きりで暮らしてきたが、その祖父を突然失ってしまう。生来ひきこもりがちな林太郎だが、祖父の営む古本屋を手伝いながらその年齢には珍しいほど多くの本を読んでいた。そんなある日、叔母の家に引き取られることになり、店を畳む準備をしていたところへ、突然言葉を話すトラネコが現れ、本を助けるために林太郎の力を借りたいといってきた。

 林太郎は面食らいながらも、好きな本のためならとネコと一緒に不思議な本の迷宮へさまよい込んでいく。

 登場するのは、おびただしい数の本が人の手に触れることなく巨大なケースに収納されている迷宮、本を効率よく読めるように本を切り刻んで断片化する迷宮、本は内容よりも売れるものこそが正しいとする迷宮……。

 いずれも本を愛した祖父から教えられたのとは違う価値観を押しつけてくる迷宮の主たちに対して、林太郎はつたないながらも自らの思いを訴えていく――。

 ベストセラー「神様のカルテ」シリーズの著者が、本を取り巻く厳しい現状に対して鋭い批判を放つファンタジー。(小学館 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    すい臓がんの治療が成功しやすい条件…2年前に公表の日テレ菅谷大介アナは箱根旅行

  3. 3

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  4. 4

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  5. 5

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  1. 6

    「戦隊ヒロイン」ゴジュウユニコーン役の今森茉耶 不倫騒動&未成年飲酒で人気シリーズ終了にミソ

  2. 7

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  3. 8

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 9

    志茂田景樹さんは「要介護5」の車イス生活に…施設は合わず、自宅で前向きな日々

  5. 10

    NHK大河「べらぼう」に最後まで東洲斎写楽が登場しないナゼ?