著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「星をつける女」原宏一著

公開日: 更新日:

「食の格付け」を仕事にするヒロイン、牧村紗英が主人公の連作長編である。「食の格付け」とはいっても、フランスの有名なガイドブックとは関係がない。彼女の顧客は飲食ビジネスに投資したり買収したりする投資家たちだ。メニューや味はもちろんのこと、サービスや経営倫理にいたるまで調べあげて評価する。つまり、グルメ評論家と市場調査員と信用調査員を兼ねた仕事といっていい。

 たとえば、フレンチレストランで味が落ちたのはなぜか。有名ラーメンチェーンから常連客が離れ始めているのはなぜか。「牧村紗英イート&リサーチ」を率いるヒロインはそういう依頼が入ると途端に動きだす。時には、紗英の大学の先輩で小劇団を主宰している真山幸太郎と組み、上司と部下、不倫カップルなどを演じて調査に取り組むのだ。白浜温泉の旅館を調査するときには、紗英の娘を連れ、真山幸太郎と家族連れを装って宿泊する。ちなみに紗英はシングルマザーだ。

 原宏一には、「ヤッさん」「握る男」「佳代のキッチン」「ヴルスト!ヴルスト!ヴルスト!」など、「食」を題材にした小説が多く、「食の小説なら原宏一」といわれるほど、その完成度にも定評がある。そういう原宏一の作品群に、また新たなシリーズが誕生したわけだ。どこにも「シリーズ第1作」とは書いていないけれど、智也に七海など、スタッフが徐々に増えていく本書の展開は、その道筋を示している。(KADOKAWA 1500円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る