「野村證券 第2事業法人部」横尾宣政著
苛烈なノルマで知られ、パワハラなど日常茶飯事。よくも悪くも活気に満ちていた1980年代の野村証券で、「コミッション亡者」と呼ばれるほど稼ぎまくった男が、手記を書いた。
将来を嘱望された「野村のエース」は、新宿野村ビル店長を最後に20年間のサラリーマン人生に終止符を打ち、独立する。世の中にない新規ビジネスを成功させようと奔走するが、暗転。オリンパスの巨額粉飾決算事件に巻き込まれ、損失隠しを指南した共犯者として、2012年、逮捕・起訴された。理不尽な取り調べにも無罪の主張を曲げず、2年8カ月の勾留を経て、最高裁に上告中だ。
手記の前半は凄まじくも華々しい野村証券時代と「ノムラな人々」の群像。後半は冤罪との闘いと、明暗が分かれる。だが、蹉跌への伏線は野村時代に張られていた。第2事業法人部に所属していた1986年、オリンパスの担当になった。オリンパスの経理を仕切っていたのは後に主犯として有罪判決を受ける事件の元凶、山田秀雄だった。
登場する主な関係者は実名、顔写真入りで、詳細なプロフィル付き。事件の真相がディテールまで生々しく浮かび上がる。世間が忘れても、著者の闘いは終わらない。(講談社 1800円+税)