「警察官の心臓」増田俊也著
「警察官の心臓」増田俊也著
夏のある日、愛知県岡崎市にある池で女性の遺体が発見された。当初自殺かと思われたが、47カ所もの刺創が確認されたため、急きょ殺人事件と認定される。
被害者は、元デリヘル経営者の土屋鮎子という高齢女性。経歴を調べると、東大を卒業した後、大手テレビ局のアナウンサーとして活躍、そして結婚。しかしその後、離婚してから性風俗の道に入り、亡くなる前には極貧生活を送っていたことがわかった。しかも76歳ながら現役の風俗嬢だったらしい。
愛知県警本部のエース刑事・湯口健次郎は、癖のつよい岡崎署の刑事・蜘蛛手洋平とギクシャクしつつもコンビを組み、捜査に乗り出した。果たして、どんな理由で彼女は殺されたのか。そしてその犯人は誰なのか。ふたりは互いの意見をぶつけ合いながら、真相に近づいていくのだが……。
2006年「シャトゥーン ヒグマの森」で「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞してデビューした作家による最新作。構想10年、544頁という大作ながら、目の前に展開される膨大な捜査資料と熱量のある刑事たちの活躍に、あっという間に物語にのみ込まれる。
(講談社 2695円)