「恩人の思想」山折哲雄著

公開日: 更新日:

「恩人」という言葉は和製漢語らしく、中国の文献には一切出てこない。夏目漱石の「虞美人草」では、主人公の「小野さん」を支援してくれた先生を恩義のある人として「恩人」と呼んでいる。恩は返さなければいけないと漱石は登場人物に言わせているが、義理と人情の世界を描いた作家・長谷川伸は「恩というのは、返すものではない。恩は着るものである」という。日本人の考える「恩」という観念は、西洋的な、債権と債務がギブ・アンド・テークの関係の中で均衡しているところから出てくるものではない。

 宗教学者が「善悪」や「正邪」という視点ではつかめない「恩」について、さまざまな人物との出会いを通して考える一冊。(ミネルヴァ書房 2800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝