著者のコラム一覧
白石あづさ

日本大学芸術学部卒。地域紙の記者を経て約3年間の世界放浪へと旅立つ。現在はフリーライターとして旅行雑誌などに執筆。著書に「世界のへんな肉」「世界のへんなおじさん」など。

「カゴメ」って籠? 「夜明けの晩」っていつ?

公開日: 更新日:

「失われた天照大神の大預言『カゴメ唄』の謎」飛鳥昭雄、三神たける著 学研 1000円+税

 アフリカを旅していたとき、こんな話を聞いた。駐在の日本人の番犬が毒を盛られて泡を吹いていたら、翌日、強盗が来る合図かも。先にワンワン吠える犬を殺しておくからだ。即座に近所の日本人が集められ、手をつなぎながら庭をぐるぐると回り、♪か~ごめ、かごめ、かーごのな~かの鳥は~と、夜通し歌いまくるという。

「大変だ、日本人が恐ろしい呪文を唱えてる!」という噂が強盗の耳に入ればしめたもの。歌詞は分からないアフリカ人すら何か不気味なものを感じとるのだろう。「結界に入ったら死ぬ」と怯えて来ないそうだ。これがもし陽気な「メリーさんの羊」なら、誰も怖がらないかもしれない。

 小さい頃は何の疑問もなく歌っていたが、よく考えれば不思議な歌詞だ。

 カゴメって籠? 夜明けの晩っていつ? なぜ鶴と亀? とどめは後ろの正面って? 「きれいはきたない、きたないはきれい」と謎掛けをするマクベスに出てくる魔女のようだ。

 本書を開くと、歌の謎についていくつかの説を紹介している。カゴメとは、真ん中の子供を「囲め」から変化したとか、「籠女」とは吉原の遊女であるといった説も。へぇ、と相づちを打ちながら読み進めていくが、途中から卑弥呼や聖徳太子、アダムに秦氏、浦島太郎まで登場して私の頭は大混乱だ。終盤に挿入された昭和っぽい漫画は、作者の妄想なのか現実の話なのか分からないが、一つ一つの歴史の裏話はおもしろい。

 本の帯には「近い将来、光の秘密組織・八幡鳩が現れる。暗号『籠の中の鳥』の意味とはイエス・キリストのことだった!」と結論大公開だが、この戦隊モノの予告のようなキャッチコピーがもはやカゴメの歌詞よりもテンションが上がる。鶴と亀と鳥は出てくるけど、ハト? しかも秘密組織のハト? 

 頭に花咲くハテナマーク。壮大な歴史ロマンや宇宙規模の謎に触れると、小さい悩みは吹っ飛ぶ。たまには「おとなムー」な世界にどっぷりはまりながら、夜更かしを楽しんではいかがだろう。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち