マクドナルド“創業者”の人生流転劇

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 ひところの苦境を脱して業績急回復というマクドナルドだが、その“創業者”の伝記映画が来週末封切りの「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」である。

 いまや世界中で見る一大ファストフードチェーンだが、もともとの「マクドナルド」を経営していたマクドナルド兄弟が飲食業を始めたのは第2次大戦の直前。戦争を経て、いよいよモータリゼーションの本格化する世相の下で一気に開花したのが、ドライブイン方式で行列の客をさばく独自の営業方針だった。映画はその隆盛ぶりに目をつけ、兄弟からフランチャイズの独占契約権をとりつけたレイモンド・クロックの人生を描く。

 注文からわずか15秒でハンバーガーとポテトとコーラを出す調理・接客方式を考え出したのは兄弟だが、クロックは彼らとフランチャイズの独占契約を結び、流れ作業型の調理・接客方式それ自体を商品として、自分の店を持ちたい人々の輪を広げていった。つまりクロック自身は飲食業者というより“起業ビジネス”のモデルを世に売り込み、兄弟からすべての権利を買収した「ファウンダー」(創業者)なのだ。

 映画はその裏面にあったドロドロの暗闘劇を巧妙に、ユーモラスな人生の流転劇として描いていく。クロック自身の半自伝的な自賛本の翻訳もあるが、一番実像に近いのはD・ハルバースタム著「ザ・フィフティーズ1 1950年代アメリカの光と影」(峯村利哉訳 筑摩書房 1200円+税)に収められた「マクドナルド兄弟」の章だろう。買収は1961年。ケネディ大統領就任と同年の、いまは昔の話である。 <生井英考>

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