「フクシマ」を暗喩とした現代社会の自画像

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 とかく対立するものと思われがちな映画の商業性と作家性だが、双方を行き来して娯楽と表現の両立をめざしてきたのが廣木隆一。その監督最新作が来週末封切りの「彼女の人生は間違いじゃない」である。

 舞台は「震災後」の福島県いわきと東京・渋谷。ふたつの街を週末ごとに高速バスで往還する謎の女。普段は律義に説明を欠かさない演出がここでは抑制され、観者の想像力を誘い出すことに努力が傾けられる。

 女は震災で母を亡くし、残った父は仮設住宅で消沈したまま、パチンコ通いで補償金を食いつぶす毎日。そんな父と2人暮らしのヒロインは、ふだんは役場勤めの身で週末ごと東京に出てデリヘル嬢に身をやつすのである。

 とはいえ「性」は主題ではなく、むしろ喪失でぽっかりとうがたれた心の穴をふさぐ補修剤のようなものとして描かれる。主演・瀧内公美の表情をそいだようなたたずまいがその印象を強め、しだいに「震災後」のいわきの廃虚の風景が、実は人混みでにぎわう華やかな渋谷の陰の素顔のように見えてくるのである。その意味でこれは「フクシマ」を暗喩とした現代の日本社会の自画像でもあるのだろう。

 開沼博著「フクシマ論」(青土社 2200円+税)は廣木と同じく福島に生まれ育った社会学者が震災前から書き継いできた福島原発関連の論考集。福島を舞台にした原発行政とその実態に、日本の戦後成長や地方と中央権力の関わりなどを綿密に論じており、震災後に一躍注目を浴びて話題になった。「3.11」は単なる通過点だったのである。 <生井英考>

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