「芸能人ショートショート・コレクション」田丸雅智著

公開日: 更新日:

 新世代ショートショートの旗手として活躍中の著者による、好きな芸能人をモチーフにしたエッセー風ノンフィクション集。登場するのは、又吉直樹藤田ニコル谷原章介、中嶋朋子など10人。芸能人との出会いがごくふつうのエッセー風に始まるのだが、現実にあったことだと思って読み進めていくうち、いつのまにか奇妙な虚構の世界に足を踏み入れてしまう仕掛けになっている。

 たとえば又吉直樹編では、成仏できずにこの世をさまよっている魂の数々を成仏させるため又吉の長髪に隠された秘密があることが明かされ、藤田ニコル編では野菜にシムカードを差し込んで野菜をスマホ化してしまう「野菜スマホ」なるものが登場する。

 登場人物がおなじみの有名人だけに、描かれている場面での表情や声まで想像できてしまい、虚構の物語がよりリアルに感じられる。物語冒頭の何げない描写が意外なラストシーンにつながる構成などもあり、著者の手腕が存分に楽しめる。

(角川春樹事務所 1200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲