「開ける男 鍵屋・圭介の解けない日常」本田久作著
36歳の圭介は、鍵屋「岩谷フーディーニ商会」のただ一人の従業員。店舗兼住居で、憧れの唄子さんの娘・レミと息子・空とともに暮らしている。空は気に入らないことがあるとすぐにトイレに引きこもるため、そのたびに圭介はレミに頼まれトイレを開けなくてはならない。
いつものようにトイレを巡り大騒ぎしていると、黒ずくめのスーツ男が店を訪ねてきた。男に連れられ、圭介がやってきたのは見るからにヤクザの事務所だった。猫を抱いた組長らしき吉村は、事務所に据えた高級金庫を、吉村自身にも開けられないようにして欲しいと意外な依頼を圭介にする。
どんな鍵でも開けてしまう圭介と鍵について悩む依頼者が織りなす連作人情小説集。(ポプラ社 680円+税)