「黙過」下村敦史著

公開日: 更新日:

 冒頭の短編「優先順位」は、臓器移植の優先順位がテーマ。ひき逃げ事故で肝臓移植を待つ患者を慕う幼馴染みの女性、そして患者を臓器移植の提供者として望む進藤准教授と、医科大学で女性初の教授を目指す都准教授とのそれぞれの思惑に挟まれ、主人公の倉敷医師は苦悩するが、ラストには表題の「黙過」に通じる意外な顛末が待っている。

 ほかに、元厚労官僚がパーキンソン病を偽っているのではないかという疑惑が中心の話「詐病」、ある養豚業者の畜舎から子豚が盗まれるという事件に絡み、命の重さを問う「命の天秤」、臓器移植したものの助からなかった娘の父親で助成金を扱う部署にいた男に対する疑惑を描いた「不正疑惑」。

 さらに前4話をベースに異種移植の是非を問う「究極の選択」の5話構成で、臓器移植の諸問題を描く連作小説集である。

 (徳間書店 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    帝釈天から始まる「TOKYOタクシー」は「男はつらいよ」ファンが歩んだ歴史をかみしめる作品

  3. 3

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 4

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  5. 5

    立川志らく、山里亮太、杉村太蔵が…テレビが高市首相をこぞってヨイショするイヤ~な時代

  1. 6

    (5)「名古屋-品川」開通は2040年代半ば…「大阪延伸」は今世紀絶望

  2. 7

    森七菜の出演作にハズレなし! 岡山天音「ひらやすみ」で《ダサめの美大生》好演&評価爆上がり

  3. 8

    小池都知事が定例会見で“都税収奪”にブチ切れた! 高市官邸とのバトル激化必至

  4. 9

    西武の生え抜き源田&外崎が崖っぷち…FA補強連発で「出番減少は避けられない」の見立て

  5. 10

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ