「黙過」下村敦史著

公開日: 更新日:

 冒頭の短編「優先順位」は、臓器移植の優先順位がテーマ。ひき逃げ事故で肝臓移植を待つ患者を慕う幼馴染みの女性、そして患者を臓器移植の提供者として望む進藤准教授と、医科大学で女性初の教授を目指す都准教授とのそれぞれの思惑に挟まれ、主人公の倉敷医師は苦悩するが、ラストには表題の「黙過」に通じる意外な顛末が待っている。

 ほかに、元厚労官僚がパーキンソン病を偽っているのではないかという疑惑が中心の話「詐病」、ある養豚業者の畜舎から子豚が盗まれるという事件に絡み、命の重さを問う「命の天秤」、臓器移植したものの助からなかった娘の父親で助成金を扱う部署にいた男に対する疑惑を描いた「不正疑惑」。

 さらに前4話をベースに異種移植の是非を問う「究極の選択」の5話構成で、臓器移植の諸問題を描く連作小説集である。

 (徳間書店 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に