「移植医たち」谷村志穂著

公開日: 更新日:

 1984年秋、臓器移植の最先端を担うドクター・セイゲルが来日し、講演を行った。聴講者の中に3人の医師がいた。

 久南大の佐竹山行蔵は肝臓がん患者を前になす術もない己の無力さを痛感し、移植医療に希望を見いだそうとしていた。

 仙台の個人病院の小児科医・加藤凌子は、16年前、日本で初めて心臓移植を行った医師の娘で、マスコミの攻勢にさらされた父の行った医療が果たして正当だったのか、それを確かめたいと思っていた。

 京都慶明大の研修医・古賀淳一は、これといった大義はなく、ただ移植医療の可能性に好奇心を刺激されていた。

 3人は共に米ピッツバーグ大学のセイゲルのもとで移植医療を学んだ後、日本初の移植専門外科を立ち上げるのだが、そこに旧態依然たる日本の医療界が大きく立ちはだかる。

 先日亡くなった“移植医療の父”トーマス・スターツルのもとで学んだ実在の日本人医師たちをモデルに、知られざる先端医療の現場と移植医たちの苦悩や葛藤をリアルに描いた、傑作長編。

(新潮社 1900円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因