手術件数のノルマ化で不要な手術も

公開日: 更新日:

 医師不足と経営の悪化が進む日本の病院では“ブラック化”が加速。「医は仁術」の精神は忘れ去られ、金儲けばかりをもくろむ「医は算術」の病院が増加している。

 富家孝著「ブラック病院」(イースト・プレス 1400円+税)では、元医師であり医療問題の取材を続けてきたジャーナリストが、現代日本の病院事情に切り込んでいる。

 町の開業医の間では、薬を短期処方にして何度も受診させる「再診料稼ぎ」が横行している。再診の場合の医療費は再診料(720円)プラス、「特に体調に変化のない患者」を診察したときの料金である外来管理加算(520円)が基本だ。さらに、ここに特定疾患療養管理料が加算される。糖尿病や高脂血症、高血圧などの外来管理に適用される加算で、中小病院では2250円となっている。合計して、3490円という計算だ。

 薬の処方だけで患者を通わせるとしたら、年4回、1万3960円で済む。ところがこれを1カ月おきにすれば年12回、「経過を丁寧に診たいから」などと言い2週間おきにすれば、年24回も再診料を取ることができる。その総額は8万3760円で、このような患者を100人持てば、病院は年間700万円も儲ける計算になる。

 設備の整った大病院でもブラック化は進んでいる。設備投資の回収目的による、手術のノルマ化だ。

 近年、前立腺がんに対する最新の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入した病院では、積極的にロボット手術を勧めてくるケースが増えている。出血量が少なく合併症のリスクも低いとの触れ込みだが、そもそも前立腺がんは手術の必要性が低いがんでもある。医師の言いなりになっていると、しなくてもいい手術で設備投資の回収に利用されかねない。

 本書ではブラック病院を見分けるさまざまな方法を紹介しているが、特に簡単なのが「看護師募集」の状況。ブラック化し激務を強いる病院では看護師の退職が多く、常に募集している。あるいは、経験者優遇をうたっている場合も要注意。ベテラン看護師までもがどんどん退職していっている証拠かもしれない。

 “難しい医療のことはお医者さんに丸投げ”という時代は終わったことを肝に銘じたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 2

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  3. 3

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  4. 4

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした

  2. 7

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  3. 8

    巨人は国内助っ人から見向きもされない球団に 天敵デュプランティエさえDeNA入り決定的

  4. 9

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 10

    佐藤輝明はWBC落選か? 大谷ジャパン30人は空前絶後の大混戦「沢村賞右腕・伊藤大海も保証なし」