「『北の国から』異聞」倉本聰著
黒板五郎が大した金も持たずに家出したとき、青函連絡船の中で腹がすいたががまんした。すると、ポケットの中で指先に触れるものがある。たたんだチラシの中に千円札が入っていた。おふくろがこっそり入れておいてくれたと思ったら、涙がビュッと飛び出した。その千円札は使えなかった。クラモト先生も似たような経験をしたという。ところがあるとき、ロケでたき火をしようとしたら火種が湿って火がつかない。すると先生が千円札を出して火をつけた。町では千円札は1000円の価値をもつが、たき火がなかったら凍え死ぬ山の中で千円札は火種にするしか役に立たないと。
撮影秘話を交え、「北の国から」に登場する黒板五郎に著者自身が架空の独占インタビューをするという異色作。
(講談社 1400円+税)