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「映画を撮りながら考えたこと」是枝裕和著

 カンヌ映画祭で21年ぶりの日本人監督最高賞受賞。是枝裕和監督は「次」をめざすという。



 語り下ろし本には数日のロングインタビューで一冊作ってしまうようなものもあるが、本書は、なんと8年間かけてライターと編集者が共同作業したものだという。子供時代の思い出話などからではなく、最初の映画作品「幻の光」(1995年)から始めてテレビマン時代の作品に戻り、さらに現在へと続く。テレビ作品ではフジテレビで日本国憲法を題材にして制作した「忘却」(2005年)について突っ込んだ話が出てくる。特に戦時中の日本の「被害」と「加害」の問題についての発言は、よそでは読めないだろう。カンヌでの受賞のあと、海外メディアの取材で日本の戦争加害について発言し、それがネトウヨに叩かれている是枝監督だが、発言が首尾一貫していることが本書からもよくうかがわれる。

 行き詰まりの目立つ映画業界で、是枝監督はその未来に心を砕くひとり。いまは監督として一本立ちしている西川美和氏を学生時代から監督助手として使い、助監督から自分がプロデューサーになって監督デビューさせたのは、テレビ業界のやり方を映画界に持ち込んだのだという。豊富な裏話の詰まった貴重な本。

(ミシマ社 2400円+税)

文藝別冊「是枝裕和」

 雑誌「文藝」の是枝裕和特集号。作家本人へのインタビューや対談を目玉に、俳優、スタッフ、評論家らの思い出話や評論、エッセーが並ぶ。巻頭のインタビューはこれまでに印象に残った映画やテレビの話。アナーキーだった「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」もよかったが、もっと保守的な「東芝日曜劇場」のほうが好きだったという話など、テレビマン出身のせいか、半分はテレビの話が挙がっているのが面白い。

 リリー・フランキーとの対談ではリリーが「(自分が)日本AV協会の名誉総裁」という話を延々続ける。そしてAV界の日本アカデミー賞を立ち上げたときは、リリーと松井秀喜が審査員だったなどの話を監督はただ聞いているだけというのも面白い。

 是枝作品常連のフードスタイリストとポスター撮影の写真家の対談など、異色の組み合わせも興味深い。

(河出書房新社 1300円+税)

「万引き家族」是枝裕和著

 ご存じ、カンヌ映画祭パルムドール受賞作となった映画のノベライズ(小説化)が本書。著者はむろん映画のオリジナル脚本を書いた是枝監督本人だ。「祥太が女の子を最初に見かけたのは去年の夏だった」から始まる物語は映画の記憶を裏切らない。それでもオッと思う発見がある。

「善悪の価値観が世間とズレているのは信代も同じだったが、治はどこかタガがはずれていて他人に誘われて盗みをしたり、だましたりすることに躊躇が無かった。むしろ、悪いことをしている時が一番楽しそうに活き活きとしていた」

 この文中の「治」が映画でリリー・フランキー演じる父親。なるほど!監督はこういう男を演じられると見込んだわけだ。映画のあとで読むべき本。

(宝島社 1300円+税)

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