「解死人次郎左」新井政美著

公開日: 更新日:

 主人公は、村はずれに住む浮浪の者・植原次郎左衛門とその息子・三十郎。幼い頃から父と一緒に戦乱の町を逃げまどって生きてきた三十郎は、成長するにつれ、村人たちに腰の低い対応をし続ける父親の姿に疑問を感じるようになっていた。

 しかし、ある日、村と村との争いがきっかけで人質として相手の村に拘束される父親を見て、実は父が元武田家の家臣であり、解死人と呼ばれるもめごとが起きた時の人質要員であることを知る。

 亡くなった母親が庄屋の娘だったことから、母の故郷の村人たちの恩義を受けて差別されながらも生かされてきたのだ。

 そして心優しく学問を愛する父が報われる世の中になってほしいという願いもむなしく、ある日野伏せりの一団が村を襲ってきた……。

「織田信忠―父は信長」の著者による最新作。武士と解死人と庄屋の縁者という3つの身分に翻弄されながら、生き抜く主人公の姿を通して、戦国の世に生きる人々の葛藤や混乱を描いている。

(河出書房新社 1600円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動