「ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと」奥野克巳著

公開日: 更新日:

 文化人類学者である著者は、ボルネオの狩猟採集民「プナン」の居住地に1年間滞在した。そこで、プナン語には「借りる」「返す」という言葉がないことに気づく。財が個人所有されるという前提がそもそもない。

 狩猟民にとって自然のたまものは共同体のメンバーで共有するものだが、自然の恵みに頼って生きる生活には「死への恐れ」が伴う。農耕を始めることでその「恐れ」はなくなったが、「所有」という概念が生まれた。所有する者は「所有」の奴隷になるリスクがある。「所有欲」のないプナンには格差がないが、個人の向上心や努力もない。

 豊かさ、幸せとは何かを問い直す人類学者のエッセー。

(亜紀書房 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?