ホモ・サピエンスだけが生き残った謎に迫る

公開日: 更新日:

「我々はなぜ我々だけなのか」川端裕人著、海部陽介監修/講談社 1000円+税

 700万年前にチンパンジーと枝分かれした「人類」は現存のホモ・サピエンスに至るまでおよそ20種類ほどの種が存在していたという。本書が問うのは、なぜ他の種は消滅して我々(ホモ・サピエンス)しか存在していないのかということだ。

 これまでの教科書的知識では、猿人から始まって、原人、旧人、そして新人(ホモ・サピエンス)に徐々に進化していったというものだった。しかし、旧人(ネアンデルタール)がそのまま進化して新人(クロマニョン)になったのではなく、ネアンデルタールとクロマニョンは同時代を生きた別の種である。また原人といえば、北京原人、ジャワ原人がよく知られているが、近年それとは別の新たな原人の発見が報告されている。

 要するに、ホモ・サピエンスに至る道は単線的なものではなく、多様で複雑な道筋があったということだ。そうした人類の多様なありようのカギを握るのがアジアの原人の存在だという。

 その研究の第一人者が本書監修者の国立科学博物館人類研究部の海部で、著者の川端は自らも原人の化石発掘現場に赴き、海部の研究成果を小説家らしい想像力を踏まえながらわかりやすく叙述する。

 なかでも興味深いのは、インドネシアのフローレス島で発見されたフローレス原人の発掘の経緯で、この身長1メートル強の小型原人を巡る論争によって人類史研究の最先端の模様をうかがうことができる。

 また台湾の海底から発見された「(アジアの)第4の原人」=澎湖人(ほうこじん)は従来の人類進化の仮説を書き換える可能性があるという。これら人類学の最新成果は知的興奮に満ちているが、その根底にあるのは、我々はどこから来たのかという根源的な疑問だ。

 この疑問こそが、我々を進化させているのかもしれない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    りくりゅう電撃引退も三浦璃来だけ競技継続の「ウルトラC」…ごく身近にも“前例”あり

  2. 2

    りくりゅうペア大逆転金メダルを呼んだ“かかあ天下” 木原龍一はリンク内外で三浦璃来を持ち上げていた

  3. 3

    松重豊がついに引退を示唆し2代目探しに言及…「孤独のグルメ」井之頭五郎を継ぐ有力候補者の実名続々!

  4. 4

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  5. 5

    “激ヤバ”高市チルドレン門寛子議員が大炎上! 国会前ペンライトデモを「ごっこ遊び」と揶揄・嘲笑

  1. 6

    木下グループにアスリート殺到 「社長自腹4000万円」だけじゃない驚きのサポート体制

  2. 7

    “幼稚さ”露呈した佐々木朗希「報奨金事件」…ド軍日本人スタッフ2名が「7000万円超」もらえず?

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  5. 10

    NHKドラマ10「魯山人のかまど」は早くも名作の予感! 藤竜也は御年84歳、枯れてなお色香漂う名演技