「くろちゃんとツマと私」南伸坊著

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 くろちゃんは、最近著者の家にやってきた黒い子ネコ。ツマは妻。そして私=著者。これが著者の家族のすべてであり、生活のすべてである。ということで、折々の南家の身辺雑事をつづったのが本書。

「しんちゃん、ウチのことしか書かないね」とツマに突っ込まれても、「いいんだよ、オレの芸風なんだよコレが」と返す著者。まさに、なんの変哲もない日常茶飯事が書かれているだけなのだが、独特の「芸風」によってなんとも味わいのある読み物になっているから不思議だ。

 たとえば、ある日、くろちゃんを脅かしたいとツマがいいだす。そこで目に夜光塗料が塗ってあるゴム製のネコを買ってきて、くろちゃんの前に置く。しかし案に相違して無反応。失望したツマは、今度こそと本物そっくりのフクロウを買おうと提案するが、3800円+税と聞き、夫はちょっと高いからと却下する。

 日常のちょっとしたことに小さな楽しみを見つけて、夫婦で共に面白がる。そんな幸福な「家族」の姿がここにはある。

(東京書籍 1300円+税)


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