「漂砂の塔」大沢在昌著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、歯舞群島の中の島のひとつ・オボロ島。レアアース目当てにつくられた日中露合弁会社「オロテック」の関係者しかいない、そんな閉ざされた島の海辺で、赴任したばかりの日本人技術者が、両目をえぐり取られた死体となって発見された。島には国境警備隊しかおらず、事件の捜査は放置されたままになっていたが、ロシアが実効支配している島に日本の警察官が表立って捜査に行くこともできない。

 そこで亡くなった社員の代わりの人員として警視庁の石上が潜り込むことに。

 捜査権も、武器もなしで乗り込むことになった石上は、得意のロシア語を駆使して、元KGBの施設長、魅惑的な容貌の女医、ナイトクラブのボスなどと接触を図るが、捜査をしている最中にまるで警告であるかのように何者かに襲われる。果たして任務は遂行可能なのか。そして、事件の真相とは……。

 直木賞、日本ミステリー文学大賞、吉川英治文学賞など、名だたる賞を総なめにしている大人気作家の最新作。離島という閉鎖空間のなかで、丸腰の主人公が危険にさらされながら謎をあばいていくストーリーに手に汗を握る。

(集英社 2000円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  3. 3

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  4. 4

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 5

    【独自】江角マキコが名門校との"ドロ沼訴訟"に勝訴していた!「『江角は悪』の印象操作を感じた」と本人激白

  1. 6

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  2. 7

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 8

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 9

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  5. 10

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール