「愛なき世界」三浦しをん著

公開日: 更新日:

 国立T大学の赤門のそばにある洋食屋「円服亭」で働く藤丸陽太は、T大理学部の研究室に出前を届けているうちに恋をしてしまった。相手はシロイヌナズナの葉を研究する本村紗英。本村が所属する研究室は植物の基礎研究をしており、一年中黒いスーツを着ている殺し屋のような風貌の室長を筆頭に、植物に魅せられた変わり者たちが集まっている。

 本村も人後に落ちない植物好き。愛のない世界を生きている植物にすべてを捧げ、自分は誰とも付き合わないと心を決めている。本村の目下の関心はシロイヌナズナの四重変異体を作ること。気の遠くなるような作業をひたすら続け、あと一歩で成功かと思ったときに、ある重大な過ちをしていたことに気づく。絶望の淵に落とされた本村に同僚や藤丸が救いの手を差し伸べる……。

 先ごろノーベル賞を受賞した本庶佑氏は基礎研究の大切さを訴え、研究者は最後まで諦めてはならないと語ったが、その言葉がそのまま小説化されたかのような基礎研究に打ち込む研究者たちの真摯な姿が描かれている。

(中央公論新社 1600円+税)


【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    目黒蓮不在のSnow Man、ラウールが"次期エース"へ台頭か「めめラウ」が与え合う影響

  2. 2

    元関取の豊山亮太さん 4年前に土俵去るも、老人ホームの介護士をしながら国家試験目指し猛勉強中

  3. 3

    松尾雄治さん(1)ゴルフ場で意識を失う…「気が付いたら病院のベッドでした」

  4. 4

    東大出身の小林政調会長は日本史を学ぶべき「2600年以上続く男系継承」は歴史なのか神話なのか…皇室典範改正で浮かんだ疑問

  5. 5

    松本人志"めちゃめちゃ癌"の心配される健康管理と伸び悩む「DOWNTOWN+」の今後

  1. 6

    国民も気づき始めた皇室典範改正のおかしさ 「愛子天皇」潰しに抗議する市民デモが国会を取り囲む?

  2. 7

    酒浸り、自殺説も出た…サッカー奥大介さんの“第2の人生”

  3. 8

    永尾柚乃は夏休みも「ヒルナンデス!」レギュラー出演でフル稼働 今や事務所の大看板に

  4. 9

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  5. 10

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?