「文学はおいしい。」小山鉄郎著、ハルノ宵子画

公開日: 更新日:

 吉行淳之介の「焰の中」に、昭和20年の米軍B29による大空襲前後のことが書かれている。焼け跡に座っていると、知り合いの娘が、小学校に貯蔵されていた鮭缶が空襲で焼けてしまったから拾いに行こうと誘った。友人とその鮭缶で雑炊を作って、数日間むさぼり食べたが、それはその年、最もぜいたくな食事だった。後に書いた「鮭ぞうすい製造法」には、17歳年下の妻と作った鮭雑炊は生臭くて食べられなかったとある。戦時中の鮭缶は地下室に詰め込んで焼夷弾をひと山落として蒸し焼きにしたから生臭さが消えたが、1杯1億円かかっている。鮭缶雑炊は吉行にとって戦争体験とつながる食べ物だった。(「鮭缶の雑炊」)

 食と文学についてのエッセー100余点収録。

 (作品社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 2

    巨人が楽天・辰己涼介の国内FA争奪戦に参戦へ…年齢、実績的にもお買い得

  3. 3

    マエケンの「DeNA入り」が急浮上! 古巣広島まさかのNO、巨人はマー君が足かせで動けず

  4. 4

    サッカー界で囁かれる森保J・長友佑都の“お役御免”と大物選手の代表復帰

  5. 5

    ドジャースの“朗希タンパリング疑惑”で大迷惑!米29球団&日本プロ球団こぞって怒り心頭の納得理由

  1. 6

    公明党が「自民との連立離脱も辞さず」の背景…まさかの“国政撤退”もあり得る深刻事情

  2. 7

    囁かれていた「Aぇ!group」は「ヤベぇ!group」の悪評判…草間リチャード敬太が公然わいせつ容疑で逮捕の衝撃

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」

  4. 9

    高市早苗総裁はまだ首相じゃないのに閣僚人事?「内閣の要」官房長官に“激ヤバ”木原稔前防衛相のワケ

  5. 10

    ドジャース大谷翔平は“自信のデカさ”も世界一! 二刀流は「自分にしかできない役割」と会見で断言