「文学はおいしい。」小山鉄郎著、ハルノ宵子画

公開日: 更新日:

 吉行淳之介の「焰の中」に、昭和20年の米軍B29による大空襲前後のことが書かれている。焼け跡に座っていると、知り合いの娘が、小学校に貯蔵されていた鮭缶が空襲で焼けてしまったから拾いに行こうと誘った。友人とその鮭缶で雑炊を作って、数日間むさぼり食べたが、それはその年、最もぜいたくな食事だった。後に書いた「鮭ぞうすい製造法」には、17歳年下の妻と作った鮭雑炊は生臭くて食べられなかったとある。戦時中の鮭缶は地下室に詰め込んで焼夷弾をひと山落として蒸し焼きにしたから生臭さが消えたが、1杯1億円かかっている。鮭缶雑炊は吉行にとって戦争体験とつながる食べ物だった。(「鮭缶の雑炊」)

 食と文学についてのエッセー100余点収録。

 (作品社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    女性を巡る愛憎より友情が勝った永遠のバディー

  2. 2

    萩本欽一〈27〉坂上二郎さんは一番特別な人。あのボケは誰にもできないよ

  3. 3

    かつての「打率4割男」は期待外れで戦力外…西武・林安可は母国・台湾野手の低評価を覆せるか

  4. 4

    佐々木朗希と山本由伸は“抱き合わせ”だったのか…ドジャース入りの裏で「謎の日本人」が暗躍

  5. 5

    48年ぶり映画出演の由美かおるさんが語る 人生が変わった瞬間「11PM」「水戸黄門」エピソード

  1. 6

    佐々木麟太郎に「個別育成プログラム」…マーリンズ入りには低予算球団ならではの“うまみ”あり

  2. 7

    佐藤二朗の地上波ドラマはしばらく厳しいが…橋本愛の事態はもっと深刻

  3. 8

    佐藤二朗vs橋本愛ハラスメント騒動は「文春嫌い」「フジテレビ嫌い」「共産党嫌い」が絡み合うカオスに

  4. 9

    (3)「森保監督は『指揮官に必要な冷徹さ』を確固たる信念として持っています」

  5. 10

    小栗旬がハリウッド“資本”映画で主演も… トラウマ級の英語力と「スター」への高い壁