「本と鍵の季節」米澤穂信著

公開日: 更新日:

 高校の図書室を舞台にした青春ミステリー。堀川次郎と友人の松倉詩門は高校2年生で、図書委員。利用者の少ない放課後の図書室で、雑談しながら当番を務めている。

 語り手の「僕」こと堀川は、一文の得にもならないのについ他人の相談に乗るお人よし。一方の松倉は大人びた皮肉屋で、どこか謎めいている。キャラの違う2人が、互いに触発されながら推理を働かせ、図書室に持ち込まれる謎を解く6つの連作短編集。

「僕」がちょっと憧れている3年生の先輩女子は、亡くなった祖父が残した金庫を開けてほしいと2人に頼む。(「913」)

 不良と呼ばれる兄を持つ後輩は、教師にテスト用紙を盗んだと決めつけられた兄の濡れ衣を晴らしたいと、2人に相談する。(「金曜に彼は何をしたのか」)

 自殺した友人が死の前日に読んでいた本を探してほしいと頼みに来た先輩は、そこに遺書が挟んであるはずだという。(「ない本」)

 違うアプローチを強みにして先輩や後輩の問題を解決してきた2人だが、ある日、「昔話でもしようぜ」と松倉が言い出し、「僕」は松倉の過去に踏み込んでいくことになる。

 顔も頭も良く、皮肉の利いたバカ話をする友人は、「僕」の想像を超える厳しい社会の風にさらされて生きていた……。最終話「友よ知るなかれ」は、2人の「その先」が知りたくなるビターな幕切れ。

(集英社 1400円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相が招いた「対中損失」に終わり見えず…インバウンド消費1.8兆円減だけでは済まされない

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  5. 5

    「NHKから国民を守る党」崩壊秒読み…立花孝志党首は服役の公算大、斉藤副党首の唐突離党がダメ押し

  1. 6

    国民民主党でくすぶる「パワハラ問題」めぐり玉木雄一郎代表がブチ切れ! 定例会見での一部始終

  2. 7

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  3. 8

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  4. 9

    長女Cocomiに熱愛発覚…父キムタクがさらに抱える2つの「ちょ、待てよ」リスク

  5. 10

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ