「本と鍵の季節」米澤穂信著

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 高校の図書室を舞台にした青春ミステリー。堀川次郎と友人の松倉詩門は高校2年生で、図書委員。利用者の少ない放課後の図書室で、雑談しながら当番を務めている。

 語り手の「僕」こと堀川は、一文の得にもならないのについ他人の相談に乗るお人よし。一方の松倉は大人びた皮肉屋で、どこか謎めいている。キャラの違う2人が、互いに触発されながら推理を働かせ、図書室に持ち込まれる謎を解く6つの連作短編集。

「僕」がちょっと憧れている3年生の先輩女子は、亡くなった祖父が残した金庫を開けてほしいと2人に頼む。(「913」)

 不良と呼ばれる兄を持つ後輩は、教師にテスト用紙を盗んだと決めつけられた兄の濡れ衣を晴らしたいと、2人に相談する。(「金曜に彼は何をしたのか」)

 自殺した友人が死の前日に読んでいた本を探してほしいと頼みに来た先輩は、そこに遺書が挟んであるはずだという。(「ない本」)

 違うアプローチを強みにして先輩や後輩の問題を解決してきた2人だが、ある日、「昔話でもしようぜ」と松倉が言い出し、「僕」は松倉の過去に踏み込んでいくことになる。

 顔も頭も良く、皮肉の利いたバカ話をする友人は、「僕」の想像を超える厳しい社会の風にさらされて生きていた……。最終話「友よ知るなかれ」は、2人の「その先」が知りたくなるビターな幕切れ。

(集英社 1400円+税)

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