「魔眼の匣の殺人」今村昌弘著

公開日: 更新日:

 関西の私大、神紅大学「ミステリ愛好会」の葉村譲と剣崎比留子が謎解きに挑む長編ミステリー。「屍人荘の殺人」で作家デビューし、鮎川哲也賞や本格ミステリ大賞を受賞した作者の待望の第2弾である。

 葉村と比留子は、ある施設を探して、人里離れたW県I郡旧真雁地区を訪ねる。そこは、前作にも登場した謎の研究機関が極秘で超能力の研究を行っていたといわれる場所。道すがら、高校生カップル、ツーリング途中の青年、親子連れの学者、オカルト雑誌の編集者らに出会い、合わせて9人の訪問者が居合わせることになった。

 窓のない箱のような施設には、必ず当たる予言者と畏怖される老女サキミが住んでいた。サキミは、あと2日の間に、この地で男2人女2人、合わせて4人が死ぬと予言していた。

 逃げ出す間もなく、人里に続く唯一の橋が焼け落ちてしまう。外の世界と隔絶されたこの地で死者が出るとしたら、自分たちのうちの誰かだ。疑心暗鬼で迎えた翌日、地震が発生し、取材に来ていたオカルト雑誌の編集者が土砂に埋まって死ぬ。予言が的中したということか?

 なぜか事件を呼び寄せてしまう美女・比留子と、ワトソンになりたい葉村は、ミステリーの知識を総動員して、クローズドサークルの中で起きる事件を推理。そしてサキミをめぐる意外な真実までが明らかになる。

 このコンビ、今村ミステリーでこれからも活躍しそうだ。

(東京創元社 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    海星・陣内優翔は長崎県初の“完全男”だが…スカウトが「上位獲得」を渋るワケ

  3. 3

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  4. 4

    二階堂ふみ&カズレーザー電撃婚で浮上したナゾ…「翔んで埼玉」と屈指の進学校・熊谷高校の関係は?

  5. 5

    自死した元兵庫県議の妻がN党・立花孝志党首を「名誉毀損」の疑いで刑事告訴…今後予想される厳しい捜査の行方

  1. 6

    永野芽郁が“濡れ場あり”韓流ドラマで「セクシー派女優転身、世界デビュー」の仰天情報

  2. 7

    突然のがん宣告にも動揺なし「で、ステージはナンボでしょうか?」

  3. 8

    長崎を熱狂させた海星・酒井圭一さんが当時を語る…プロ引退後はスカウトとして大谷翔平を担当

  4. 9

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩

  5. 10

    平和記念式典での石破首相スピーチの評判がすこぶるいいが…原稿を下書きしたのはAIだった?