「希望の糸」東野圭吾著

公開日: 更新日:

 静かな住宅街で喫茶店を営む女性経営者が殺された。捜査にあたった警視庁捜査1課の松宮脩平は、強盗でもない上に、誰からも恨まれた様子のない弥生が殺されたことに、不自然さを覚える。弥生には離婚歴はあったものの元夫との関係もこじれた様子はなく、誰も弥生を悪く言う人がいないのだ。

 そんな事件に首をひねる松宮のもとに、一本の電話がかかってきた。それは、ある金沢の料亭の女将が自分を探しているという話。不思議に思ってかけなおすと、死んだと聞かされていた自分の父親が、いま末期がんで死ぬ間際だという信じられない話だった……。

 親から子へと受け継がれていく血縁をテーマにした長編ミステリー。ある殺人事件に隠された謎と、刑事自身の出生の謎という2つの物語が並行して語られていく。地震で子どもを失い不妊治療の末に子どもを得た夫婦、子を授からなかったことでそれぞれが別々の道を歩むことを決めた夫婦、自身の息子の存在を遺言で残した父親らが絡み合いながら、事件の真相が見えてくる。

 人気の加賀恭一郎も少しだけ登場。シリーズのスピンオフ作品ともいえそうだ。

(講談社 1700円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ