「脳卒中の再発を防ぐ本」平野照之監修

公開日: 更新日:

 がんや心臓疾患などとともに、常に日本人の死因の上位に位置している脳卒中。発症直後は再発予防に取り組むことを固く誓っても、時間が経つと疎かになり、およそ35%に再発が起きているという。

 脳卒中は3つのタイプに分けられ、主に動脈硬化が原因で起こる「脳梗塞」と「脳出血」、脳の血管にできたこぶ(動脈瘤)の破裂が原因となる「くも膜下出血」がある。いずれも再発が多い病気であり、早ければ発症から1~2週間、あるいは数カ月から数年経って起こることもある。再発すると最初の発症時よりも症状が重くなりやすいため、再発の危険因子となる高血圧治療に加え、血栓を防ぐ抗血栓薬など複数の薬の服用を、生涯にわたって続ける必要がある。

 ところが、自己判断で服用をやめる人が非常に多いという。脳卒中で入院した約2万1000人を対象に行われた調査では、血栓をできにくくするワルファリンを退院後も服用し続けていた人は、2年後で半数以下という結果が明らかになっている。理由は、効果が目に見えて実感できるものではないためだが、治療を中断すると再発率が高まることを理解していないことも原因だと本書。

 また、再発を防ぐには適度な運動も不可欠である。発症後は安静にしすぎたり、まひや意欲の低下でひきこもりがちになる人も少なくない。しかし、ウオーキングなどの有酸素運動は減量に有効で、血圧コントロールにも役立つ。手足が動かしにくい場合は、筋肉を緩める薬を服用したり、関節を矯正する手術などの方法も用いられる。

 再発を繰り返すと、脳神経細胞へのダメージから認知症にもなりやすい脳卒中。正しく理解して、いざというときに備えたい。

 (講談社 1400円+税)

【連載】長生きする読書術

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑