「さんかく」千早茜著

公開日: 更新日:

 東京のデザイン事務所に勤めていたデザイナーの高村夕香は、1年前に会社を辞めて美大時代の友人がいる京都に戻り、町家で一人暮らしを始めた。毎朝自分好みに握った塩むすびにぱくつきながら仕事をするのが日課になっていたが、以前カフェでバイトをしていたときに知り合った「伊東くん」という年下の営業マンと再会し、食事をするうちに食の趣味が合うことに気づく。

 互いのプライバシーには踏みこまず、程よい距離感で時々会ってはお互いの好物を一緒に食べていたのだが、彼とルームシェアをすることになって少しずつバランスが崩れ始める。伊東くんには華という彼女が、夕香には長年関係が切れない本庄という男がいた。食べることでつながっていた2人の関係はどこに向かうのか……。

 第21回小説すばる新人賞を受賞した「魚神」でデビューし、同作で第37回泉鏡花文学賞を受賞、その後「あとかた」「ガーデン」など次々に話題作を発表している著者の最新作。人それぞれの価値観や暮らしへの向き合い方が表れる「食べる」という行為に焦点をあて、人間関係の不思議さをさらりと描いている。

 (祥伝社 1500円+税)



【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  2. 2

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  3. 3

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  4. 4

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  5. 5

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  1. 6

    大炎上中の維新「国保逃れ」を猪瀬直樹議員まさかの“絶賛” 政界関係者が激怒!

  2. 7

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  3. 8

    維新の「終わりの始まり」…自民批判できず党勢拡大も困難で薄れる存在意義 吉村&藤田の二頭政治いつまで?

  4. 9

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  5. 10

    SKY-HI「未成年アイドルを深夜に呼び出し」報道の波紋 “芸能界を健全に”の崇高理念が完全ブーメラン