「経済のカラクリ」神崎兵輔著/祥伝社新書

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「なぜ日本人の賃金は下がったのか」「なぜサブスクが急増しているのか」。本書は、経済にまつわる53の疑問に、4ページという短い文章で次々に答えていくショートショート型の解説書だ。

 私は経済をなりわいにしているので、知っていることも多かったが、それでもまったく知らないことがいくつもあった。

 例えば、「なぜ『公証人』は年収3000万円も稼げるのか?」だ。公証役場というくらいだから、私は公務員がやっているものだとばかり思っていた。しかし、実態は、準公務員でありながら、独占市場で稼げる独立採算の自由業だった。検察官や裁判官が、定年退官した後に就職できる事実上の天下り先なのだ。しかも、面倒な作業は事務員に任せて、署名押印するだけで効率的に大儲けできる。「利権」というのは、知らないところにたくさん残っているのだ。

 本書のなかで、著者はさまざまな問題を一刀両断しているので、読んでいて気持ちがいい。ただ、私は本書の一番の価値は、専門的になり過ぎていないことだと思う。

 典型が、「なぜMMTは経済学者に否定されるのか?」だ。MMT(現代貨幣理論)というのは、「自国通貨建ての国債をいくら発行しても財政破綻しない」という理論だと著者は言っている。

 ただ、経済学者の間でそうした主張をすると、袋叩きに遭う。MMTは、無制限の国債発行を許容しているのではなく、あくまでもインフレが高進するまでの間という制約を設けているし、MMTは国債発行で得られる財源を雇用創出プログラムに振り向けるという政策とセットになっているからだ。

 ただ、一般の人がMMTを理解するために、そんな細かい話は不要で、著者の「大胆な要約」で十分ではないかと思う。実は、専門家はそうした要約が苦手だ。私がMMTの解説を書くとしたら、どうしても細かい部分に踏み込んでしまうし、私の立場を明らかにするために、ある意味で偏った解説を書いてしまうのだ。

 本書は、難解な言い回しが一切ないので、1つの項目を数分で読破できる。だから、通勤かばんのなかに忍ばせれば、ちょっとした合間に知識を増やすことができるのだ。 ★★半(選者・森永卓郎)

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