「ヨーコ・オノ・レノン全史」和久井光司著

公開日: 更新日:

 1980年12月8日。ジョン・レノンは、自宅のあるニューヨークのダコタ・ハウスの正面エントランスで、狂信的なファンに撃たれて死亡した。ジョンが生きていれば今年80歳。夫の死を目の当たりにした妻ヨーコは、今87歳になっている。

 大方の日本人は、ヨーコを「元ビートルズのジョン・レノンの妻」として知っている。さもなければ、過激な前衛芸術家、奇声を発するシンガー、ウーマンリブの活動家をイメージするかもしれない。つかみにくいヨーコの全体像を、当時の社会と音楽シーンを背景にまとめ上げた労作。

 ミュージシャンでビートルズ研究の第一人者でもある著者は、中学生だった1970年代初めにアーティスト、ヨーコ・オノのすごさに目覚めた。以来、今日まで彼女の活動を追い続けている。

 東京生まれのヨーコとリバプール生まれのジョンは、ロンドンのギャラリーで出会い、双方のパートナーと別れて結婚。2人で過激な音楽活動を展開する。時は1960年代終わりの激動の時代。ビートルズのひとりとしてすでに音楽界の頂上を極めてしまったジョンにとって、戦闘モードのアーティスト、ヨーコは人生を懸けるに足る刺激的な存在だった。

 ポップカルチャーのリーダーの座を降り、5年間の主夫生活を送る間にジョンは変わっていく。

 1980年、復帰に動き出したジョンは、ヨーコとのデュオアルバム「ダブル・ファンタジー」をリリース。ところが、この年の終わりに、突然の別れが訪れた。世界中がジョンを悼んだ。

 その後のヨーコは「悲劇の妻」では終わらなかった。亡きジョンと対話するように詩を書き、曲をつくり、つらい体験を歌に変えた。愛と信頼と平和を世界に訴え続けた。全編からヨーコ・オノに対する著者のリスペクトが伝わってくる。

 ジョンとヨーコのアルバム名、ジャケット写真、曲名、発表時期、バンドメンバー名なども克明に書かれていて、資料価値も高い。

(河出書房新社 3200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る