「日本の戦争映画」春日太一著

公開日: 更新日:

 戦犯裁判の理不尽さを描いたのが、フランキー堺主演の映画「私は貝になりたい」(1959年、橋本忍監督)だ。妻と子と暮らしていた人のいい床屋の豊松は、召集されて戦地に赴く。上官の命令で捕虜を殺したが、終戦後、国際法違反で戦犯裁判にかけられる。「上官の命令は天皇陛下の命令だから逆らえるはずがない」と訴えてもGHQには通じない。「逆らわなかった段階で意思があったんだろう」とみなされ、絞首刑となる。豊松は「生まれ変わるなら、私は貝になりたい」という言葉を残して死ぬ。

 戦後、初めて戦地を舞台にした谷口千吉監督の「暁の脱走」(1950年)や、精神性や文化風土の違いを超えて、日本人軍曹とイギリス人通訳が人間として向き合う姿を描いた大島渚の「戦場のメリークリスマス」(1983年)など、日本の戦争映画の変遷を追う。

 (文藝春秋 880円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか